<< Travel Top
< RUSSIA Top
最終話 おしまい  

 稚内港に接岸。アナウンスにしたがって日本人から船を降り、順番に入国審査を受ける。

ロシアで受けた度重なる審査と違い、日本の係員は笑顔で簡単明瞭だった。

「こんにちは〜〜〜♪」

(.........)

係員の緩んだ頬と弾んだ声にこの国ののんきな現状が見える。
入国審査で「こんにちは〜〜〜♪」って言われたのは始めてだ(脚注1)。

「申告する物は無いですね〜。」

「無いですね」と尋ねられて、「いえ、あります」って答える奴ぁいないだろうと思いつつ、

「はい、無いです」

こうして緊張も何も無い中、あっけなく日本へと帰って来た。
国際フェリーターミナルからバスターミナルまで少し離れているが、ぶらぶら歩いていく事にした。

 舗装されてはいるが、細くて狭い道路。
 こまごまと立ち並ぶ家々。
 いたる所で目に付く自動販売機。
 走り去るキレイな自動車。

海峡一つ隔てただけで、こうも違うものなのか、と僅か数十km向こうの国を思い返していた。

どっちがいいとか、悪いとか。そんなんじゃないけれども、自分の知らない人や物。習慣や歴史。日本にいては知り得なかった様々な事があり、ロシアと言う一つの世界に足を踏み入れ、自分の世界が一つ広がったと思った。

 そうして、私は露店(脚注2)でおにぎりを買い求め、久々の日本のご飯を噛み締めたのでした。

おしまい。

< before

next >

 
 


 脚注1:もしかして油断させる作戦なのかも知れない(笑)

 脚注2:バスターミナル前に露店が並んでた。ちょっと嬉しい。

稚内港に接岸した船