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第3章 第1話 サラリーマンはオハへ行く  

 ウラジオストックでの3日目。明日は飛行機にてサハリンへと向かうのだが、場所も分からない空港へといきなり向かうのも不安(脚注1)なので、今日は一度空港まで下見に行ってみようと決めていた。

 「まずは朝飯」とホテルのラウンジへ向かう。すると、窓際で食事をとっている一人の男性の姿が。テーブルの上にはウラジオストックガイドマップ。間違いない。日本人だ。ルーシー号がらみ以外で日本人に会うのも珍しい。思わず話しかけてしまった。

 「すいません、よろしいですか?」

 その方は昨日、飛行機にてウラジオ入りし、今日、サハリン最北の町『オハ(脚注2)』へと向かうのだと言う。

 「お仕事で行かれるのですか?」
 「いや、一度行ってみたかったのですよ」
 「....」

 (は? 何しに??)
 (怪しい......あまりにも怪しすぎる.....)
 (この人......仕事は? 家は? 妻は? 子は????)
 (日本でも窓際?)

 そんな私の考えをよそに、サラリーマンは朝からイクラをスプーンですくって食べている。まぁ、でも、何よりウラジオ空港から来た、と言う事実は嬉しい。そこらへんの情報を聞き出す事に。

 「空港(脚注3)からホテルまでタクシーで来たのですが、最初、運転手は50ドル(脚注4)、って言うのですね。しかし、高いので40ドルまで値切らせました」

 40ドル...高いとみるか、安いとみるか、人によって違うだろう。しかし『地球の歩き方』を見ると、電車とバスとを乗り継いで空港まで行けない事もないらしい。やはりここは冒険してみたい。サラリーマンさんに別れを告げ、部屋に戻ると早速仕度をしてウラジオストックの駅へと向かった。

つづく  

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 脚注1:送迎やタクシーで行くつもりは全くなかった。

 脚注2:ユジノサハリンスクから北へ約600km。
    
町名が現地語で「悪い場所」と言う意味から由来する通り、荒れたツンドラが広がり、油田採掘を主産業とする何もない町。

 脚注3:空港は市街から離れており、車で約1時間あまり。
    感じとしては関空→梅田とか成田→都内とか千歳→札幌
    みたいなイメージ。

 脚注4:米ドル