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第1話 ウオッシュ・アウェイ  

 

 小雨の降る中、富山県の伏木駅に電車が到着。
地元の学生に混じって大きな鞄を担いだ人々が降りる。一目見て周りから浮いた存在。

 改札を出ると、いかにも『ロシアへ向かうぞ!』といったオーラを出す人々が7、8人程集まり、会社員風の人から説明を受けている。
 「???」
 何かと思い、聞いてみると...
 「ルーシー号の停泊場所が変更になりました」
 げげげ。
 何と言う事だ。本当は駅近くの岩壁に停泊するはずなのに。

 そこで、船舶会社の人が車で送ってくれる事になった。
 「順番に乗って下さい」
 と言われた車にはゴルフバックが積んである。自家用車なのか?

 一度に全員運べないので、私は他の人に順番を譲り、車が戻ってくるのを待ちながら、残ったもう一人の方と話して過ごした。

 石田君と言うその方は、関西在住の大学生。内定式までの間、ヨーロッパを旅するのだと言う。なんとうらやましい身分だろうか。

 彼はネットで仕入れたロシア最新情報を教えてくれた。
 「ウラジオストックは2、3日前に洪水が起こり、シベリア鉄道は橋が流され運休中(脚注)らしいですよ」

 「え...」

 (おいおい。ウラジオストックは大丈夫なんかいな?)

 私はシベリア鉄道には直接関係ないのだが、停泊場所の変更といい、洪水といい、波乱を感じさせずにはいられないのだった。

 

つづく

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脚注:厳密には『運休』ではなく30kmモスクワ寄りの隣駅(ウゴリナヤ駅)での折り返し運転