ミュンヘン2日目。

この日は少し足を伸ばして、キームゼー(脚注)へと向かう。

そうそうに朝食をとり、支度を整えてミュンヘン中央駅へ。
プリーン・アム・キームゼー駅(Prien am Chiemsee 脚注)までの切符を自動販売機で購入。ザルツブルグ行きの電車に乗り込もうとするが、列車の出るホームまでがやたらと遠い。
発車直前、ぎりぎりに乗車。

車内は乗客が少なくて、ガラガラ。電車はガタガタと音をたてて、ミュンヘンの街を離れていく。

50分程でプリーン駅到着。  

さて、ここから目指すヘレンキームゼー城はまだまだ遠い。

まずは湖の船着き場を目指す。
夏場なら、ここから船着き場まで、観光用の蒸気機関車が走っているのだが、シーズンオフのこの時期は走っていない。
地面にこびり着いた雪を切り裂くように、一直線に線路だけが港へ向かって伸びている。

 


 

駅を出て、線路に沿って歩き出す。
寒い。
足下からジンジンと冷え込む。

通りに沿って、フツーのドイツの住宅街を歩く。ひたすら歩く。
ところどころ雪が積もっている。マジ寒い。

(本当に辿り着けるの?)

他にも歩いている人がいればまだ気分的に救われるのだが、人通りがほとんどないので不安になる。

それでも励ましあいつつ、頑張って歩くこと30分近く。遠くに桟橋らしきものが見えてきた。
船着き場だ。

 

 

  

これで一安心.....と思いきや、ここにも誰もいない。
桟橋はあるものの、船はなし。
チケット売り場らしきボックスも、土産物屋らしき場所も、待合室らしき場所もシャッターが閉まってる。

どーしていいのか...オロオロする私ら。
そうこうするうちに雪が降ってきた。
降り出した雪はみるみるうちに激しさを増し、吹雪きになった。
あっと言う間にあたりの景色を真っ白に変えていく。

さむーーーーーーっ
誰か、マジでどうにかしてくれよーーーーーーっ

と、その祈りが通じたのか、たまたま通りかかったおっさんが待合室の鍵を開けてくれた。
うむ?係員がいたのか? なんせよありがとう。おっさん。

  

 
 

 

暖房機具が何一つない待合室で船を待つ私ら。
そこに欧米人のカップル登場。雰囲気からして、ドイツ人ではなさそうだ。
私らと同じように観光客のようだが、それにしては何かフキゲンそう。
まぁ、何か人には言えない事情があるのかも知れない。

そうこうするうち、桟橋の出航時刻ボードを見ると、出航時刻の5分前になっていた。
にもかかわらず、何の連絡もない。
一体これはどういう事なのだ?
桟橋には先程どこからか船が帰ってきて停泊しているのだが、勝手に乗っていいいのかどうか。
チケット売り場らしきボックスは相変わらず閉まったまま。
欧米人カップルさんも勝手がわからず、不機嫌そうな表情のままオタオタしてる。

しゃーない。いっちょ聞いてくるか。
ドイツ語は知らないが、なんとかなるやろ。

待合室の裏手に乗務員控え室らしき部屋を発見。
ドアを開けてチケットの事を聞いてみる。

「えくすきゅ〜ず み〜
  ちけっと、ひあ〜?」
┐(-。-)┌

「on the boat」( ゚▽゚)σ

おぉぉぉ。通じる通じる。英語通じるやん。
船内でチケット販売だから、とりあえず乗っていいのですね。

私はヨメはんに声をかけ、早速、桟橋へと向かう。
私らが動き出したその様子を見て、外人カップルも不機嫌な顔のままついてくる。

 

 

船に乗り込むとすぐ横手にチケット売り場の小窓があった。
なるほど、確かに船内で発売なのね。
私とヨメの2人分購入。

お客は私ら2人と外人カップルの2人のみ。

湖面を滑るように動き出す...とはいかず、ガタガタ揺れながら動き出す。
船のちょっと「いなたい(脚注)」感じがまたよろしい。
ぐんぐんスピードを上げて船は進んでいく。

 


湖面をガタガタ進む

 

15分程で城のある小島『ヘレンインゼル島』に到着。
ここから城まで、シーズンならば馬車が走っているのだが、この季節にそんなモノあるわけがない。
またしても歩く。

何もない一本道をひたすら歩く。
外人カップルは私らをしりめにサッササッサと早足で歩き、あっと言う間に姿が見えなくなってしまった。
船内でも、ここでも、ハタから見ている分には会話をしているようには見えず、観光を楽しんでいるようにも全く見えないのだが...

 

...この2人、一体、どういう関係なのだろうか?

 

どーでもいいことなのだが、いろいろと頭の中で思い描いてしまう。

もしや、自殺しに来た、とか?
いやいや、一方を誘い出して殺しに来た、とか?

 


一本道をひたすら歩く

 

そんなよからぬ事を考えてながら雪の中を2,30分は歩いただろうか。
林を抜けると広大は英国風庭園と、その奥にお城が見えた。

ああ、やった着いた。
本当に着いたよ。

ヘレンキームゼー城である。


 

(脚注)

【キームゼー】
『ゼー』とはドイツ語で『湖』の意味。日本語風に言えば『キーム湖』。
このキーム湖に浮かぶ小島『ヘレンインゼル島』にルードヴィッヒ2世が建てた3つの城のうちの1つ、ヘレンキームゼー城がある。

【プリーン・アム・キームゼー】
プリーンは街の名前。『キーム湖のプリーン』の意味。『フランクフルト・アム・マイン(マイン川のフランクフルト)』や『ローテンブルグ・ダー・タウバー(タウバー川のローテンブルグ)』のように、ドイツにはこうした名前が多い。


駅から港へ徒歩で向かう場合、駅裏口側(観光鉄道側)から伸びる幹線道路に沿ってひたすら歩きましょう。

【ルードヴィッヒ2世が建てた3つの城】
1つは御存知『ノイシュバンシュタイン城』。もう1つは唯一完成した城の『リンダーホフ城』。3つ目が『ヘレンキームゼー城』。
どの城も不便な場所に建つのが困りモノ。

*補足
市販のガイドブックにはリンダ−ホフ城とヘレンキームゼー城を、それぞれ『宮殿』と訳しているのもあるが、ここでは「城」で統一した。

【いなたい】
形容詞 (「田舎い」が語源か?(確証なし)/大阪弁)
1:あか抜けない。古臭く、淋しい雰囲気。
2:素朴な。
用例:「あのデパートの屋上遊園地、結構、いなたいよね。」
1980年代に関西の音楽家が使い出したのが最初と言われ、現在も極めて狭い範囲内での音楽関係者でしか使われていない言葉。