たんぽぽ

駐車場にふりそそぐ なんてゆうこともない西陽が
とても素敵に見えたから 当分この町にいよう
派手な野心とは無関係に
ほつれかけたものを結んで暮らそう

ガラス越しの夏休み 散々泣かされた算数
転げるように過ぎてきた ちゃんと言うこと聞いてきた
次にすることは見えないけれど
とっちらかったものをしゃがんで拾おう

例えば早起きしたり少し本気で笑ったり
家からの電話を無愛想に切るのをやめたり
ああ そんなような事から始めてみよう

道端にはいつくばった 西洋タンポポを見ながら
なんだか無性に泣けたから もう少しこの場所にいよう
確かな自信とは無関係に
とぎれかけたものをつないで暮らそう

例えば手紙の返事を書いたりあいつの顔浮かべたり
お客さんとの出会いは今日しかないって思ってみたり
ああ そんなような事から始めてみよう

 

習慣が大事だという毎日の習慣が 何をすればいいのか
頭のきわめて先っぽでは 何かが思考をかすめるが
本当にそれをすべきとか 
してみようという意欲が全然起こらない

毎朝8時に起きてバイトに行って 
帰ってきて5時から机に向かって
2時間なにかを書くとかそういうことをすべきだろうか
何かを書きたいわけではないのに
そして2時間後にはごはんを食べて 
それから何をすればいいのだろうか
人はこんな不安をやりすごす術を覚えて
どうにかくり返していくのだろうか

何も起きない 何も起こさない 何も起きなくてもいい
そんなような人々がこの世にはきっといっぱいいて
でも みんな何かをしているのだろう

まずは体を動かす事 と定めて
日曜日ふと仁和寺八十八ケ所巡りをしようと思い立ち決行
たぶん2時半ぐらいに着いて4時前には下にいたから
1時間ちょいで山登りをしたことになる
何かを感じなきゃなどと言う事は全て忘れて 
ただがむしゃらに歩きだす
汗だくになる でも気持ちよかった
なんとなく家に帰ったら友達にTELしてもいいなぁって言う
ラフな気分が沸き起こったくらいで
山道ですれ違うおじさんおばさんが「こんにちは」って言ってくるのに最初少し面喰らったが
向こうが「こんにちは」って言ってきたら 
「こんにちは」って返すって言った感じで
恥ずかしがりながら応えていたら序序に
「こんにちは」って言ってみようと言う気になって
「こんにちは」って先に言ってみると大抵の人が
「こんにちは」と気さくに返してくれる 
ちょっとうれしい
唯一ヤンキーのでかいにーちゃんに無視された

途中ですごく喉が乾いてきて下に降りたらグリーンティーのようなものが飲みたいと思う 
どうしてもグリーンティーだと思う
行きしにチェックしていたきぬかけの道沿いのサテンに行ってみようと思いながら歩く
汗だくの帰り道に寄った地下1階のその店は「山猫軒」と言う店で店員の反応がちょっとにぶいけどなかなか感じのいい店だった
メニューに抹茶フロートがあったので飛びつく
それと洋梨のカスタードケーキもふんぱつ
おいしい かなりグーだ
こんどバイト代がでたらあいつをさそってランチを食べに来ようと思う

 

ああ そんなような事から始めてみよう

心にもない事ばかり 口にすることになれ過ぎて
どっかに何かが消えたから 当分空っぽで居よう
曖昧なイエスを手放して ごねながらぽかんとして居よう
ごねながらぽかんとして居よう
800円のスパゲティーでも食べに行こう

 

1stアルバム「HIIMAGINE」収録
97年8月4日陰陽にて初披露